ペンタックス FA43mmF1.9 Limited 2000年11月25日発売
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『 私が間違っておりました。 』
ペンタックスというメーカーは、ニッチなものを真面目に作らせたら天下一品である。言い方は悪いが、自分たちがマイナー路線をひた走るメーカーだということをきちんと理解しており、キヤノンやニコンといった巨大ブランドに対抗していくためにはどうすれば良いかというのを心得ていて、反主流派のツボを押さえた商品作りをする。
かつてユニバーサルマウントの中心的存在として一世を風靡したこともある企業としては、そのあたりの見極めと転身は見事である…本人たちの本意であるかどうかは別として。
そんなペンタックスが、MZ-3に装着することを念頭において開発した特殊なレンズが、Limitedと呼ばれるシリーズの3本であり、そのトップを飾ったのが、この43mmF1.9である。(APS-Cサイズ機では66mm相当)
このLimitedシリーズに関しては、いつもその見慣れない焦点距離が取り沙汰されるが、ズームレンズ全盛時代にあって、細かい焦点距離の違いを云々するのはナンセンスであって、実際使っていても特に不便に感じる事はない。いや、不満がないどころか、実はこの43mmという焦点距離、物凄く使いやすいのだ。
一般に、標準レンズと言えば50mmのことで、その万能性を指して「一歩前進・一歩後退で広角的にも望遠的にも使える」という言い方がされる。とはいえ、実際には50mmは50mmなのであって、主体と客体の配し方でそれっぽく演出できるというだけのことだ。
しかしそれでも、エンゾーには50mmを広角の代用として使うことには抵抗がある。どうごまかしても、広角独特のパースは付かないからだ。つまりそこに、この43mmの存在意義が出てくる。
ファインダーを覗くと、当たり前だが、50mmを通して見たときほど狭苦しさがない。それでいて、見たいものが『それ』と認識できる大きさできちんと収まり、画面上で主張してくるだけの大きさを確保している。これは特に、人物を撮るとよく分かる。見ず知らずの人を見るともなく見るときの、あの感じだ。
それでいて、もう一歩踏み込んで、お互いのパーソナルスペースが重なり合うところまで被写体と接近しても、まだバストショット+αの範囲が写る余裕がある。周囲の雰囲気を生かしたポートレートに使え、しかも広角独特の歪みはほとんど発生しない。
つまるところ、このレンズは
ペンタックスのFAレンズと言えば名玉揃いで知られており、特に35mmF2と50mmF1.4は、どうしてあの価格で買えるのかが不思議なくらいコストパフォーマンスが高く、ファンの間では「隠れ☆(スター)レンズ」などと呼ばれている。Limited43mmは、そんな偉大な先輩たちの間に割って入った異端児であり、価格が高めなこともあって、身の置き所が微妙な立場ではある。
しかし、お気に入りのボディーにこれ一本付けて町に出たとき、その万能性に、きっと驚くだろう。ペンタックスユーザーなら必ず手に入れておきたい、とっておきの「切り札」である。
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